藤沢久美

政府の重要な役割の一つに、税を通じた富の再分配という機能がある。この再分配の「分配」がきわめて重要で、どこにどれだけ分配するかが国民生活の将来を 左右する。当然のことながら、分配したお金が、再びお金を生む「金融的投資」が期待されているわけではないが、分配したお金が死に金にならず、ソーシャ ル・リターンを生み出してくれる「社会的投資」が求められる。 しかし、今の先進国の財政状況を見ると、どうやらこ の分配に失敗した結果のようにも思われるので、今後の財政再建を目指す過程においては、目指すソーシャル・リターンを明確にした資金使途の開示を行うこと が求められる。 公益財団制度が整備され、地域の産業創造のために、資金循環を生み出す公益財団が、各地に生まれ始めている。財団は、地域金融機関や 地域の企業などを理事やアドバイザーとして協力体制を作りながら、税制面で優遇のある寄付を幅広く募り、地域で資金を求める地場企業やNPOなどに資金を 提供する。しかも、単に資金を提供するだけではなく、協力体制にある金融機関や企業などからの情報支援、人的支援、市場支援なども行っている。 地元に密着した形で、日本の各地で、企業と金融機関を巻き込みながら、幅広いステイクホルダーと一緒に、新たな資金循環と確度の高いソーシャル・リターンの獲得を目指しているのである。